商法

第684条(定義)

この編(第七百四十七条を除く。)において「船舶」とは、商行為をする目的で航海の用に供する船舶(端舟その他ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する舟を除く。)をいう。

第685条(従物の推定等)

船舶の属具目録に記載した物は、その従物と推定する。
②属具目録の書式は、国土交通省令で定める。

第686条(船舶の登記等)

船舶所有者は、船舶法(明治三十二年法律第四十六号)の定めるところに従い、登記をし、かつ、船舶国籍証書の交付を受けなければならない。
②前項の規定は、総トン数二十トン未満の船舶については、適用しない。

第687条(船舶所有権の移転の対抗要件)

船舶所有権の移転は、その登記をし、かつ、船舶国籍証書に記載しなければ、第三者に対抗することができない。

第692条(共有に係る船舶の利用)

船舶共有者の間においては、船舶の利用に関する事項は、各船舶共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。

第693条(共有に係る船舶の利用)

船舶共有者は、その持分の価格に応じ、船舶の利用に関する費用を負担しなければならない。

第697条(船舶管理人)

船舶共有者は、船舶管理人を選任しなければならない。
②船舶共有者でない者を船舶管理人とするには、船舶共有者の全員の同意がなければならない。
③船舶共有者が船舶管理人を選任したときは、その登記をしなければならない。船舶管理人の代理権の消滅についても、同様とする。
④第九条の規定は、前項の規定による登記について準用する。

第700条(船舶共有者の持分の売渡しの請求等)

船舶共有者の持分の移転又は国籍の喪失により船舶が日本の国籍を喪失することとなるときは、他の船舶共有者は、相当の対価でその持分を売り渡すことを請求し、又は競売に付することができる。

第703条(船舶の賃借人の権利義務等)

前条に規定する船舶の賃借人は、その船舶の利用に関する事項については、第三者に対して、船舶所有者と同一の権利義務を有する。
②前項の場合において、その船舶の利用について生じた先取特権は、船舶所有者に対しても、その効力を生ずる。ただし、船舶の賃借人によるその利用の態様が船舶所有者との契約に反することを先取特権者が知っていたときは、この限りでない。

第705条(定期傭船者による指示)

定期傭船者は、船長に対し、航路の決定その他の船舶の利用に関し必要な事項を指示することができる。ただし、発航前の検査その他の航海の安全に関する事項については、この限りでない。

第706条(費用の負担)

船舶の燃料、水先料、入港料その他船舶の利用に関する通常の費用は、定期傭船者の負担とする。

第710条(属具目録の備置き)

船長は、属具目録を船内に備え置かなければならない。

第711条(船長による積荷の処分)

船長は、航海中に積荷の利害関係人の利益のため必要があるときは、利害関係人に代わり、最もその利益に適合する方法によって、その積荷の処分をしなければならない。
②積荷の利害関係人は、前項の処分によりその積荷について債務を負担したときは、当該債務に係る債権者にその積荷について有する権利を移転して、その責任を免れることができる。ただし、利害関係人に過失があったときは、この限りでない。

第713条(船長の責任)

船長は、海員がその職務を行うについて故意又は過失によって他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、船長が海員の監督について注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

第738条(船長に対する必要書類の交付)

荷送人は、船積期間内に、運送に必要な書類を船長に交付しなければならない。

第739条(航海に堪える能力に関する注意義務)

運送人は、発航の当時次に掲げる事項を欠いたことにより生じた運送品の滅失、損傷又は延着について、損害賠償の責任を負う。ただし、運送人がその当時当該事項について注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
1.船舶を航海に堪える状態に置くこと。
2.船員の乗組み、船舶の艤装及び需品の補給を適切に行うこと。
3.船倉、冷蔵室その他運送品を積み込む場所を運送品の受入れ、運送及び保存に適する状態に置くこと。
②前項の規定による運送人の損害賠償の責任を免除し、又は軽減する特約は、無効とする。

第741条(荷受人の運送賃支払義務等)

荷受人は、運送品を受け取ったときは、個品運送契約又は船荷証券の趣旨に従い、運送人に対し、次に掲げる金額の合計額(以下この節において「運送賃等」という。)を支払う義務を負う。
1.運送賃、付随の費用及び立替金の額
2.運送品の価格に応じて支払うべき救助料の額及び共同海損の分担額
②運送人は、運送賃等の支払を受けるまで、運送品を留置することができる。

第745条(荷送人による発航後の解除)

発航後においては、荷送人は、他の荷送人及び傭船者の全員の同意を得、かつ、運送賃等及び運送品の陸揚げによって生ずべき損害の額の合計額を支払い、又は相当の担保を供しなければ、個品運送契約の解除をすることができない。

第760条(船荷証券の不実記載)

運送人は、船荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗することができない。

第765条(数通の船価証券を作成した場合における運送品の引渡し)

陸揚港においては、運送人は、数通の船荷証券のうち一通の所持人が運送品の引渡しを請求したときであっても、その引渡しを拒むことができない。
②陸揚港外においては、運送人は、船荷証券の全部の返還を受けなければ、運送品の引渡しをすることができない。

第767条(二人以上の船価証券の所持人から請求を受けた場合の供託)

二人以上の船荷証券の所持人が運送品の引渡しを請求したときは、運送人は、その運送品を供託することができる。運送人が第七百六十五条第一項の規定により運送品の一部を引き渡した後に他の所持人が運送品の引渡しを請求したときにおけるその運送品の残部についても、同様とする。
②運送人は、前項の規定により運送品を供託したときは、遅滞なく、請求をした各所持人に対してその旨の通知を発しなければならない。
③第一項に規定する場合においては、最も先に発送され、又は引き渡された船荷証券の所持人が他の所持人に優先する。

第769条(複合運送証券)

運送人又は船長は、陸上運送及び海上運送を一の契約で引き受けたときは、荷送人の請求により、運送品の船積み後遅滞なく、船積みがあった旨を記載した複合運送証券の一通又は数通を交付しなければならない。運送品の船積み前においても、その受取後は、荷送人の請求により、受取があった旨を記載した複合運送証券の一通又は数通を交付しなければならない。
②第七百五十七条第二項及び第七百五十八条から前条までの規定は、複合運送証券について準用する。この場合において、第七百五十八条第一項中「除く。)」とあるのは、「除く。)並びに発送地及び到達地」と読み替えるものとする。

第788条(船舶所有者間の責任の分担)

船舶と他の船舶との衝突(次条において「船舶の衝突」という。)に係る事故が生じた場合において、衝突したいずれの船舶についてもその船舶所有者又は船員に過失があったときは、裁判所は、これらの過失の軽重を考慮して、各船舶所有者について、その衝突による損害賠償の責任及びその額を定める。この場合において、過失の軽重を定めることができないときは、損害賠償の責任及びその額は、各船舶所有者が等しい割合で負担する。

第789条(船舶の衝突による損害賠償請求権の消滅時効)

船舶の衝突を原因とする不法行為による損害賠償請求権(財産権が侵害されたことによるものに限る。)は、不法行為の時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。

第790条(準衝突)

前二条の規定は、船舶がその航行若しくは船舶の取扱いに関する行為又は船舶に関する法令に違反する行為により他の船舶に著しく接近し、当該他の船舶又は当該他の船舶内にある人若しくは物に損害を加えた事故について準用する。

第793条(救助料の額)

救助料につき特約がない場合において、その額につき争いがあるときは、裁判所は、危険の程度、救助の結果、救助のために要した労力及び費用(海洋の汚染の防止又は軽減のためのものを含む。)その他一切の事情を考慮して、これを定める。

第797条(救助料の割合等)

救助に従事した船舶に係る救助料については、その三分の二を船舶所有者に支払い、その三分の一を船員に支払わなければならない。
②前項の規定に反する特約で船員に不利なものは、無効とする。
③前二項の規定にかかわらず、救助料の割合が著しく不相当であるときは、船舶所有者又は船員の一方は、他の一方に対し、その増減を請求することができる。この場合においては、第七百九十三条の規定を準用する。
④各船員に支払うべき救助料の割合は、救助に従事した船舶の船舶所有者が決定する。この場合においては、前条の規定を準用する。
⑤救助者が救助することを業とする者であるときは、前各項の規定にかかわらず、救助料の全額をその救助者に支払わなければならない。

第798条(救助料の割合の案)

船舶所有者が前条第四項の規定により救助料の割合を決定するには、航海を終了するまでにその案を作成し、これを船員に示さなければならない。

第800条

船舶所有者が第七百九十八条の案の作成を怠ったときは、管海官庁は、船員の請求により、船舶所有者に対し、その案の作成を命ずることができる。
②船舶所有者が前項の規定による命令に従わないときは、管海官庁は、自ら第七百九十七条第四項の規定による決定をすることができる。

第808条(共同海損の成立)

船舶及び積荷等に対する共同の危険を避けるために船舶又は積荷等について処分がされたときは、当該処分(以下この章において「共同危険回避処分」という。)によって生じた損害及び費用は、共同海損とする。
②前項の規定は、同項の危険が過失によって生じた場合における利害関係人から当該過失のある者に対する求償権の行使を妨げない。

第809条(共同海損となる損害又は費用)

共同海損となる損害の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額によって算定する。ただし、第二号及び第四号に定める額については、積荷の滅失又は損傷のために支払うことを要しなくなった一切の費用の額を控除するものとする。
1.船舶 到達の地及び時における当該船舶の価格
2.積荷 陸揚げの地及び時における当該積荷の価格
3.積荷以外の船舶内にある物 到達の地及び時における当該物の価格
4.運送賃 陸揚げの地及び時において請求することができる運送賃の額
②船荷証券その他積荷の価格を評定するに足りる書類(以下この章において「価格評定書類」という。)に積荷の実価より低い価額を記載したときは、その積荷に加えた損害の額は、当該価格評定書類に記載された価額によって定める。積荷の価格に影響を及ぼす事項につき価格評定書類に虚偽の記載をした場合において、当該記載によることとすれば積荷の実価より低い価格が評定されることとなるときも、同様とする。
③次に掲げる損害又は費用は、利害関係人が分担することを要しない。
1.次に掲げる物に加えた損害。ただし、次のハに掲げる物にあっては第五百七十七条第二項第一号に掲げる場合を、次のニに掲げる物にあっては甲板積みをする商慣習がある場合を除く。
イ.船舶所有者に無断で船積みがされた積荷
ロ.船積みに際して故意に虚偽の申告がされた積荷
ハ.高価品である積荷であって、荷送人又は傭船者が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知していないもの
ニ.甲板上の積荷
ホ.属具目録に記載がない属具
2.特別補償料

第815条(定義等)

この章において「海上保険契約」とは、損害保険契約のうち、保険者(営業として保険の引受けを行うものに限る。以下この章において同じ。)が航海に関する事故によって生ずることのある損害を塡補することを約するものをいう。
②海上保険契約については、この章に別段の定めがある場合を除き、保険法(平成二十年法律第五十六号)第二章第一節から第四節まで及び第六節並びに第五章の規定を適用する。

第816条(保険者の填補責任)

保険者は、この章又は海上保険契約に別段の定めがある場合を除き、保険の目的について、保険期間内に発生した航海に関する事故によって生じた一切の損害を塡補する責任を負う。

第818条(船舶保険の保険価額)

船舶を保険の目的物とする海上保険契約(以下この章において「船舶保険契約」という。)については、保険期間の始期における当該船舶の価額を保険価額とする。

第819条(貨物保険の保険価額)

貨物を保険の目的物とする海上保険契約(以下この章において「貨物保険契約」という。)については、その船積みがされた地及び時における当該貨物の価額、運送賃並びに保険に関する費用の合計額を保険価額とする。

第820条(告知義務)

保険契約者又は被保険者になる者は、海上保険契約の締結に際し、海上保険契約により塡補することとされる損害の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項について、事実の告知をしなければならない。

第822条(航海の変更)

保険期間の始期の到来前に航海の変更をしたときは、海上保険契約は、その効力を失う。
②保険期間内に航海の変更をしたときは、保険者は、その変更以後に発生した事故によって生じた損害を塡補する責任を負わない。ただし、その変更が保険契約者又は被保険者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
③到達港を変更し、その実行に着手した場合においては、海上保険契約で定める航路を離れないときであっても、航海の変更をしたものとみなす。

第842条(船舶先取特権)

次に掲げる債権を有する者は、船舶及びその属具について先取特権を有する。
1.船舶の運航に直接関連して生じた人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権
2.救助料に係る債権又は船舶の負担に属する共同海損の分担に基づく債権
3.国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)若しくは国税徴収の例によって徴収することのできる請求権であって船舶の入港、港湾の利用その他船舶の航海に関して生じたもの又は水先料若しくは引き船料に係る債権
4.航海を継続するために必要な費用に係る債権
5.雇用契約によって生じた船長その他の船員の債権

第843条(船舶先取特権の順位)

前条各号に掲げる債権に係る先取特権(以下この章において「船舶先取特権」という。)が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、同条各号に掲げる順序に従う。ただし、同条第二号に掲げる債権(救助料に係るものに限る。)に係る船舶先取特権は、その発生の時において既に生じている他の船舶先取特権に優先する。
②同一順位の船舶先取特権を有する者が数人あるときは、これらの者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、前条第二号から第四号までに掲げる債権にあっては、同一順位の船舶先取特権が同時に生じたものでないときは、後に生じた船舶先取特権が前に生じた船舶先取特権に優先する。

第846条(船舶先取特権の消滅)

船舶先取特権は、その発生後一年を経過したときは、消滅する。

第847条(船舶抵当権)

登記した船舶は、抵当権の目的とすることができる。
②船舶の抵当権は、その属具に及ぶ。
③船舶の抵当権には、不動産の抵当権に関する規定を準用する。この場合において、民法第三百八十四条第一号中「抵当権を実行して競売の申立てをしないとき」とあるのは、「抵当権の実行としての競売の申立て若しくはその提供を承諾しない旨の第三取得者に対する通知をせず、又はその通知をした債権者が抵当権の実行としての競売の申立てをすることができるに至った後一週間以内にこれをしないとき」と読み替えるものとする。

第849条(質権設定の禁止)

登記した船舶は、質権の目的とすることができない。

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